名古屋地方裁判所 平成10年(わ)525号
主文
被告人を懲役二年六か月及び罰金八〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から、四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人は、名古屋市中区栄二丁目四番五号チサンマンション栄Ⅱ番館広小路B棟四一一号室を営業所とし、ファッションヘルス「としま」等の名称で風俗営業等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、他人名義で店舗を営業するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 平成五年分の実際の総所得金額が八、六五一万四、二二三円であったのに、所得税の納付期限である平成六年三月一五日までに同市中区三の丸三丁目三番二号所在の所轄名古屋中税務署長に対し、所得税の確定申告書を提出しないで右納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、自己の平成五年分の所得税三、八二四万九、五〇〇円を免れ、
第二 平成六年分の実際の総所得金額が二億三、一二六万八、八二〇円であったのに、所得税の納付期限である平成七年三月一五日までに前記所轄名古屋中税務署長に対し、所得税の確定申告書を提出しないで右納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、自己の平成六年分の所得税一億八六三万九、〇〇〇円を免れ、
第三 平成七年分の実際の総所得金額が一億九、四四九万七、九五九円であったのに、所得税の納付期限である平成八年三月一五日までに前記所轄名古屋中税務署長に対し、所得税の確定申告書を提出しないで右納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、自己の平成七年分の所得税八、九九二万七、五〇〇円を免れた。
(証拠)
括弧内の番号は証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。
一 被告人の公判供述、検察官調書八通(乙2ないし9)
一 査察官調査書二〇通(甲1ないし19、23)
一 査察官報告書三通(甲20、21、28)
一 証明書五通(甲24ないし27、29)
一 電話聴取書(甲22)
(法令の適用)
罰条 いずれも所得税法二三八条一項、二項(情状による)、罰金等臨時措置法二条一項
刑種の選択 いずれも懲役刑と罰金刑を併科
併合罪の処理 平成七年法律第九一号による改正刑法附則二条二項、三項、刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第二の罪の刑に法定の加重)、罰金刑につき同法四八条二項
労役場留置(罰金刑) 刑法一八条一項
刑の執行猶予(懲役刑) 刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、風俗営業など多数の店を経営する被告人が、他人名義を用いて営業する等の方法により、確定申告を全く行わずに、平成五年分から平成七年分までの多額の所得税を免れたという事案である。
動機において酌量の余地がない上、そのほ脱額は、三年間で合計約二億三〇〇〇万円にも達し、ほ脱率も一〇〇パーセントで、その手口も、計画的かつ巧妙で悪質というほかない。もとより、被告人の刑事責任は軽いものとはいえない。
しかしながら、被告人が本件犯行を素直に認め、既に修正申告等を済ませ、平成八年分、九年分の自己の確定申告も行い、さらに従業員などに対しても確定申告を行うように指導し、事業については経理体制を含め抜本的に改善を図るなど、本件について深く反省する態度を示していること、被告人については、これまでに罰金前科があるのみであること、その家族環境など被告人にとって酌むべき事情も多数認められるので、今回に限り懲役刑の執行を猶予することとした。
(求刑 懲役二年六月及び罰金八、〇〇〇万円)
(裁判官 堀毅彦)